2026年6月01日

こんにちは。歯科助手の佐藤です。
「うちの子、歯並びがガタガタかも…」「指しゃぶりがやめられなくて出っ歯が心配」 そんな不安を抱える親御さんの間で、今注目を集めているのが「プレオルソ」という小児矯正治療法です。
従来のワイヤー矯正とは異なり、プレオルソは「歯を直接動かす」ことよりも「口周りの筋肉のバランスを整える」ことに主眼を置いています。本コラムでは、プレオルソの仕組み、メリット・デメリット、そして治療を成功させるためのポイントについて、3000字規模の情報量で詳しく解説します。
1. プレオルソとは何か?:原因を根本から治す「機能矯正」
プレオルソは、歯科医師・大塚淳先生が開発したマウスピース型の小児矯正装置です。対象年齢は主に3歳から10歳前後(混合歯列期)で、永久歯が生え揃う前の段階で使用します。
従来の矯正との最大の違い
一般的な矯正が「生えてしまった歯をワイヤーで引っ張って動かす」のに対し、プレオルソは「機能矯正」と呼ばれます。 子どもの歯並びが悪くなる最大の原因は、実は「遺伝」だけでなく、「口周りの筋肉(舌、唇、頬)の使い方の悪さ」にあります。
口呼吸をしている
飲み込む時に舌を突き出す癖がある
常に口がぽかんと開いている
これらの悪い習慣(悪習癖)があると、外側からの唇の力と内側からの舌の力のバランスが崩れ、歯が正しい位置に並ばなくなります。プレオルソは、装置を装着することでこれらの筋肉を正しく訓練し、結果として歯並びを整える「土台作り」を行うのです。
2. プレオルソの5つの大きなメリット
なぜ今、多くの歯科医院でプレオルソが推奨されているのでしょうか。その理由は、子どもにも親にも負担の少ない設計にあります。
① 取り外しが可能で、痛みが少ない
プレオルソは柔らかいポリウレタン素材でできています。ワイヤーのように口の中を傷つける心配がほとんどありません。また、食事や歯磨きの時は外せるため、虫歯のリスクを抑え、清潔な状態を保ちやすいのが特徴です。
② 装着時間が短い(日中1時間+就寝時)
学校に装置を付けていく必要はありません。家の中での1時間と、寝ている間だけの装着で効果を発揮します。そのため、お友達に気づかれることなく矯正を進められる点も、多感な時期のお子様にとって大きな利点です。
③ 「口呼吸」から「鼻呼吸」への改善
プレオルソは歯並びを整えるだけでなく、口を閉じる力を鍛えます。これにより、万病の元と言われる「口呼吸」から、免疫力を高める「鼻呼吸」への移行を促します。アレルギー性鼻炎や風邪の予防にもつながるなど、健康面での副次的なメリットが非常に大きいです。
④ 抜歯の可能性を減らせる
顎が成長段階にあるうちにプレオルソで顎の幅を広げておくことで、永久歯が並ぶためのスペースを確保できます。これにより、大人になってから本格的な矯正(ブラケット矯正)が必要になった際も、抜歯をせずに済む確率が格段に上がります。
⑤ 比較的安価に始められる
本格的な成人矯正に比べると、プレオルソは一期治療(子どもの矯正)の範囲内で行われるため、費用を抑えられる傾向にあります。
3. プレオルソで適応となる症例
プレオルソは、以下のようなさまざまなタイプの不正咬合に対応しています。
上顎前突(出っ歯): 上の歯が前に出ている状態。
反対咬合(受け口): 下の歯が上の歯より前に出ている状態。
叢生(ガタガタ): 顎が小さく、歯が重なって生えている状態。
過蓋咬合(深い噛み合わせ): 上の歯が下の歯を深く覆い隠している状態。
4. 治療の流れと「あいうべ体操」の重要性
プレオルソの治療は、単に装置をはめるだけでは完結しません。「装置+MFT(口腔筋機能療法)」の組み合わせが不可欠です。
治療のステップ
相談・検査: レントゲンや写真撮影、歯型の採取を行います。
診断: プレオルソが適応か判断し、治療計画を立てます。
装置のお渡し: お子様の口の形に合わせたタイプを選択し、フィッティングします。
定期チェック: 1〜3ヶ月に一度通院し、経過を確認します。
成功の鍵は「あいうべ体操」
プレオルソ治療中に並行して行われるのが、舌の筋肉を鍛えるトレーニングです。有名なものに今井一彰先生が提唱する「あいうべ体操」があります。「あー、いー、うー、べー」と大きく口を動かすことで、舌の位置を正しい位置(スポット)に導き、鼻呼吸を定着させます。このトレーニングを毎日コツコツ続けられるかどうかが、治療期間の短縮と仕上がりの美しさに直結します。
5. デメリットと注意点:親のサポートが不可欠
非常に優れた装置ですが、いくつか知っておくべき注意点もあります。
本人のやる気が必要: 取り外しができるということは、「サボることもできる」ということです。お子様が自発的に装着するまで、親御さんの根気強い励ましが必要です。
すべての症例を完治させるものではない: プレオルソはあくまで「土台作り」です。骨格的な問題が強い場合や、完璧な歯並び(ミリ単位の調整)を求める場合は、中学生以降にワイヤー矯正(二期治療)が必要になるケースもあります。
紛失のリスク: 外している間にティッシュに包んで捨ててしまったり、ペットが噛んでしまったりすることがあります。必ず専用ケースに入れる習慣をつけましょう。
6. プレオルソを始めるタイミング
「いつから始めればいいですか?」という質問をよく受けますが、一つの目安は「前歯が永久歯に生え変わる頃(6〜7歳)」です。
しかし、反対咬合(受け口)の場合は、顎の成長バランスを整えるために3〜5歳の乳歯列期から開始することもあります。早めに始めることで、骨格の歪みを最小限に抑えることができるからです。 少しでも気になったら、まずは「検診」という形で矯正に詳しい歯科医師に相談することをお勧めします。
7. まとめ:歯並びは一生の宝物
子どもの矯正治療は、単に見た目を綺麗にするためのものではありません。
しっかり噛めることで脳の発達を促す
正しい呼吸で健康な体を作る
コンプレックスを解消し、自信を持って笑えるようにする
これらは、親が子どもに贈ることができる「一生もののプレゼント」と言えます。プレオルソは、そのプレゼントを「痛くなく、楽しく」実現するための強力なツールです。
お子様の「ぽかん口」や「食べ方の癖」は、体からの小さなサインかもしれません。そのサインを見逃さず、プレオルソという選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。早期の働きかけが、将来の大きな負担を減らす第一歩となります。
執筆にあたってのヒント このコラムは、プレオルソの基本を網羅したものです。もし特定の読者(例えば、受け口に悩む親御さん向け、あるいは費用面を心配する方向け)にターゲットを絞りたい場合は、特定のセクションを深掘りすることで、より心に響くコンテンツになります。
